日本は男は外に働きに行き、女は内で家事をするのが伝統というのは誤解

「妻がうちで家事をしているだけ」

「妻がうちで家事をしているだけ」なんて形態は欧米の産業革命の時に工場勤めや会社勤めの概念が出来て、
それを日本が明治維新の時に輸入しただけです。
定着に関しては日本が軍国主義になり、男が外に戦争に行くためにそういうシステムが奨励されたわけです。
男が心おきなく戦いにいけるように妻が気を配れというわけです。
加えて「生めよ増やせよ」の人口増産計画がその傾向を後押ししました。
戦後から近代になってまた女性の社会進出が進んできましたが。

 

日本人は夫は外に働きに行き妻はうちで家事をするのが伝統


基本的に「日本人は夫は外に働きに行き妻はうちで家事をするのが伝統」なんてのはよくある誤解です。
そんな伝統は日本にはまるで存在しません。日本の夫婦は基本的に昔から共稼ぎが伝統です。
農民は夫妻ともに分業はあれど田畑に働きに行き、
職人は「男が作って女が売りに行く」逆転体制でした。
まあ漁師の場合は船に乗ってに漁に出るのは原則男だけというのはあり「男は海に漁に出る、女は陸で内を守る」という感じでしたが、女にも力仕事を含めたいろいろな仕事があり専業主婦とは程遠いです。
商人も似たようなものです。小さい商家ほどそうですが女にもいろいろ仕事があります。
余談ですが商家で異色なのは「入り婿制」というシステムで自分の息子に家を継がすのではなく自分の娘に優秀といわれる男を夫として結婚させて商家を継がせるものです。
そして、その男が商人としての才覚がないようなら娘と離縁させて追放し、また新しい優秀そうな男を娘と結婚させます。「家を潰すような才覚のない男はたとえ実子でも追放すべし」が商家の家訓です。
日本の場合、強いて言えば武士が「男は外に働きに女はうちで家事」というのに近いですが、
江戸時代の記録では実際は少なくとも下級武士の妻は生活苦もありいろいろ働きに出ていたのが現状です。
浪人した武士にいたっては、夫の武士があの有名な傘張りをして女が外に奉公などの仕事に行く逆転現象でした。

ちなみに、戦前は「女性の炭鉱夫」なんてのもいました。
戦前の日本ですら、「女性の内助の功」とやらは一部の上流社会だけでした。

この国の夫婦は妻が夫の前を歩く

さて、ついでに言うと古来から日本ほど女性の地位が高い国はありませんでした。 
記紀によると邪馬台国が制圧した50の熊襲のうち10は女性が酋長だったそうです(これは間違いでしたが、何かの本で読んだ記憶があります。というか邪馬台国ではなく「大和政権勢力が」が正解かもしれません。)  
まあ、大和政権自体も卑弥呼、臺與、神功皇后、飯豊皇女など女性権力者を輩出しているので似たようなものなのですが。
そして、有名な戦国期のルイス・フロイスの「この国の夫婦は妻が夫の前を歩く」でしょうか?
いろいろ、ありますが、江戸時代以前の日本における女性の地位の高さは驚異的なものでした。
しかし、江戸時代になるとようやく、武士階級の間で儒教主義が浸透し、  女性の地位が低下し、庶民も明治以降~戦後まで女性の地位が低い時代が続いたわけです。
原因は皮肉な事に前記どおり政府の政策なのでしょうね。

オスは獲物を獲りに行き、メスは巣穴で子供の世話をするのが動物的本能


「オスは獲物を獲りに行き、メスは巣穴で子供の世話をするのが動物的本能」なんて主張を見かけましたが、
そのような形態の動物はペンギンなどごく一部の動物にのみ見られる習性でかなり変わった部類に属します(その数少ない生物も哺乳類よりむしろ鳥類・恐竜にそんな習性があります )。  
   人間に近いサルの仲間、とりわけ類人猿にはそんな習性はありません。オスもメスも餌を獲りに行きます(ただしオスがメスに餌をプレゼントして、その見返りだかにメスが交尾に応じたりする例は報告されてます)。
それと注目すべきはサルの仲間には時々「女帝」が登場する現象があります。
また、社会形態が人間に近いとされる食肉目(いわゆる猛獣 )の仲間にもそんな習性はありません。オスもメスも餌を獲りに行きメスは出産したら、
すぐに単独で餌を獲り子供を育てます(だから人間の女性もそうしろと言ってるわけではないです。それは酷すぎるでしょう)。  
 類人猿などの行動を見る限りでは原始人は男も女も獲物を狩りに外に出たと考えたほうが合理的です。
ただ、クロマニヨン人には男と女子供で「分業制」はあったようですが、それでも、
女は棲家で家事をしていたわけではなく、植物、小動物などの食物採集行為をしていたようです。
 
 こういう事を考えるとやはり高度成長期だか戦前みたいに「男が外に働きに行き、女が内で家事をするだけ」 という形態は無理があるように思えます。
ただ、個人的に皮肉に思うのは合理的かどうかは別にして
「専業主婦」という概念は女性に非常に都合のいいものの筈であり、逆に女性が男性と同じように仕事をするというのは女性にとってしんどいことだと思うのに、
「専業主婦」より「女性の社会進出」が女性に有利なように言われているのは不思議です。
いや、やはり、「女性を家に押し込めておく」 というのはやはり女性にとって不利でしょうね。労働のキツさはともかくとして。

なにを持って家事とするかが問題ですが 
魚民の世界などては料理は 男がする文化があり、
「買い出し」は男の仕事する職種は多く、
「ゴミ捨て」 「掃除」「看病」を男がやる文化・職種もあります。
武士の世界では戸締りは必ず主人がやるように言われています。

少なくとも「現代の専業主婦がやる仕事」は全て古今東西、女性がやってきたというのは誤認です。  
無論も女性がやってきた家事も多いですが、それは文化や職種によって異なります。